Share

第4話 朝食

Author: スナオ
last update Last Updated: 2025-04-14 15:46:26

 リオとのキスのあと仮眠を取っていた桜夜は、鼻をくすぐる良い匂いで目をさました。掛け布団代わりにしていたマントとジャケットを床に落としながら起き上がり、あくびと伸びをする。油断も緊張もない、「自然体」、それが戦う者の心構えだ。ゆっくりと匂いの根源をたどると、そこは昨夜ココアを入れたキッチンだった。なんと三姉妹が朝食を作っていたのである。

「あっ、桜夜さん……。えっと、おはよう、ございます……。すみません勝手にキッチンを借りてしまって。……どうしてもホムラちゃんがおなかが空いたと」

「なっ、ねえちゃんたちも賛成してただろ!」

「さっ、桜夜様のお席はこちらですよ」

 三者三様の反応を見せる少女たち。まだ少し怯える黄色の少女、怒りっぽい赤の少女、そして早くも忠誠心があるように見せる青の少女。

 そんな青の少女であるリオは、メイドよろしく桜夜のために椅子を引く。その席は当主席だった。今ここにいる人間のうち誰が一番偉いかを考えた上での行為なら、この少女なかなかあなどれない。そう桜夜は思った。しかしそんなことはおくびにも出さずに彼は「ありがとう」と席についた。

「あの、よろしければ召し上がってください……」

 黄色の少女、サイカが桜夜の前に食事を並べる。置かれたのはオムレツとベーコン、少量のサラダとトースト、そしてコーヒーだった。桜夜がどうしたものかと考えていると、赤の少女ホムラが桜夜の皿からトーストを1枚かっさらってかじってしまった。

「もう、ホムラちゃん。桜夜様より先に食べちゃだめでしょう?」

「け!」

 ホムラは機嫌悪くトーストをかじり続ける。桜夜は苦笑いをしながら、「いただきます」と手を合わせた。

 信用できない人間の作ったものは食べない。

 そんな基本を守らない桜夜。

 そこにはある理由があった。

 彼がお人よしだからではない。

 彼にはどんな毒も効かないからだ

to be continued

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   第5話 デート……?

     謎の男と四方院宗主玄武が争っていた頃、桜夜たちはゲームセンターで遊んでいた。ホムラはやはりというかゲームも苦手らしく、UFOキャッチャーに失敗しては筐体を壊さんばかりだった。「あー! もう! なんなんだよ!」 ホムラをどうにか落ち着かせようとするサイカとリオをしり目に、桜夜は球体に近づくと100円を一枚投入した。「あっ、オレのくまさんを奪う気だな!」 暴れだしそうなホムラをサイカが羽交い締めにすると、リオは妹が炎を出してもいいよう鎮火の準備をしていて。そんな騒ぎには目もくれず、桜夜は球体のクレーンを操作する。狙うは1つ、ホムラが欲しがっているテディベアについているタグだった。そのプラスチックでできた糸に、慎重にクレーンの端をひっかけると、テディベアはゆっくり宙に浮いて。「あっあっあっ……」 ホムラは絶望の声を出しながらその光景を見守る。やがてふらふらと揺れながらテディベアは取り出し口に落ちて。それをしゃがんで取り出した桜夜は、にやりと笑ってホムラに見せつけた。当然ホムラは「熊盗ったーーー!!」と大騒ぎを始めて。それがうるさかったからか、桜夜は彼女の口をテディベアの口でふさいで。「あげるよ」「……?」 状況がよくわからないと硬直したホムラをサイカが解放すると、ホムラはゆっくりとテディベアを抱きしめた。「……余計なことしやがって」 悪態をつくホムラだったが、テディベアをしっかりと抱きしめた。これでやっと移動できると内心でため息をついた桜夜は、嫌な気配に冷や汗が背中を伝うのを感じた。「なんか今日の桜夜さん、ホムラに甘くない?」「わたくしもプレゼントがほしいです」 もちろん姉妹の嫉妬心は感じていた。だが桜夜が感じた脅威はそれではない。どこかから――四方院家の屋敷の方から――近づいてくる不吉な予感を感じていたのだ。to be continued

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   第4話 神殺し

     四方院家の壊された正門前では、玄武と槍をもった中華服の男の戦いが続いていた。四方院家の屋敷は龍穴の上に建てられている。ゆえに玄武はこの星の持つ力を借り受け、背丈に合わせた短い刀に乗せて男を攻撃していたのだが……。(この暖簾に腕押しの感覚、まるで桜吹雪とやり合っているときのようじゃ……) この地球(星)の清らかな力すら切り捨てる男の槍の禍々しい力。2つの力の余波は屋敷の建物を壊し、力なきものたちは2人のそばに近づくことさえできなかった。「その槍、神殺しじゃな?」「そうだ。ゆえに神でもない貴様に勝ち目はない」「それはどうかの? そう決めつけるものでは、ない!」 玄武は小柄な身体と機敏な動きを生かして、槍では戦いにくい超近距離戦に持ち込むと、男を逆袈裟に切った。男の服が破け、肌と肉を切り、出血する。「さすがは四方院家宗主。あの人の直系だけはある」 男は関心したようにそう言うと、後ろに飛びのき、その勢いも活かして槍を突き出した。やりの先端から飛び出す負のフォースは玄武を吹き飛ばした。「ぐ……」 玄武ががれきの中に倒れこむなか、男はどこかに逃げていった。逃げ道には男の血が道しるべのように落ちていた。「追うのじゃ!」 玄武は命じるが、四方院の兵たちは動けなかった。日常は崩れ始める。to be continued

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   第3話 日常の歪み

     ホムラとたっぷりじゃれあった後、桜夜はお昼を兼ねて少女たちと出掛けることにした。「いやあ、お出掛けなんて久しぶりだね! 本当は二人で来たかったな……」 最後の方は小声で桜夜にだけ聞こえるように言ったつもりだったが、リオには聞こえていたらしい。リオは恐ろしい笑顔を浮かべながらサイカにいった。「これ以上抜け駆けは許しませんわよ。サイカちゃん……」「ひいっ」 そんな二人を無視し、ホムラがハンバーガーショップを指差す。「なあオレあれ食いたい!」「身体鍛えてるならジャンクフードは……」「いいだろー、食いたいんだよー」 珍しく甘えた声を出すホムラに、桜夜は折れた。「サイカとリオはハンバーガーでいい?」「はい  桜夜さんさえよければ」「わたくしもです」 にこやかに笑う姉妹だったが、背後でお互いをつねり合っていた。◆◆◆ そんな和気あいあいとする桜夜一行とは裏腹に、四方院家宗主、四方院玄武は重大な脅威を感じていた。気配を読み、未来を占うは四方院家が先祖代々継いできた力だった。その脅威を感じているのは玄武だけらしく、屋敷は不気味なほど静寂に包まれていた。(まさか……) 仕込み杖を掴むと、黒の作務衣に陣羽織という格好のまま、本邸正門に玄武は急いだ。◆◆◆ 玄武が走り出した頃、本邸正門の前に中華服を着た男が槍を片手に立っていた。男の回りには倒された門番たち。男は傷1つ負うどころか汗もかいていないようだった。男が門に向かって槍を振るうと本邸を守る結界もろとも門が崩れおちた。そんな男を、玄武は静かに出迎えた。「お主、いんたーふぉんを知らんのかの?」 玄武はおどけるように言う。しかし男はニコリともしなかった。「不死者を出せ」「出すわけなかろう。貴様こそ門の修理代を出すがよいわ」 金持ちのくせにケチなことを言う玄武にかまわず、男は槍を振るった。玄武はその小さき身体に迫る死の刃を悠々と杖で受け止め、激しい殺陣が始まった……。to be continued

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   第2話 焔の日常

     桜夜からキスをしてもらったサイカはご機嫌で朝食を作っていた。「ふっふふ、ふふふーん♪」 鼻歌混じりに料理をするサイカの姿を、ホムラはいぶかしげに見ていた。「なあ、リオねえ。さーねえの奴なんであんなにご機嫌なんだ?」 リオは顎に人差し指を置いて考えるポーズを取る。「そうねえ……きっとサイカちゃんは「大人」になったのよ」「はあ?」 意味わかんねえと言わんばかりのホムラを尻目に、リオは新聞を読んでいる“ふり”をしている桜夜を見た。「次はわたくしもお願いいたしますね?」「だめだぞリオねえ! 今日の桜夜はオレのトレーニングに付き合うんだ!」「ふふ、もちろん。あなたの大切な時間を奪ったりしないわ」「た、大切なんかじゃねえよ!」 いつの間にか新聞を読むふりを止めた桜夜は、賑やかな姉妹を見て、これが家族ってやつなのかな、と少しだけ寂しげな顔をした。◆◆◆ 朝食のあと、桜夜とホムラは外に庭にいた。桜夜は白い着物に紺の袴という剣士なのか神主なのかわからない服装で、両手を後ろで組んでいた。対するホムラは赤いシャツに赤いハーフパンツ、手に赤いグローブをしている。「今日こそぶん殴ってやる」「お手柔らかに頼むよ。ホムラちゃん」「ちゃん付けで、呼ぶなあ!」 それが試合開始のゴングとなった。ホムラは桜夜の顔面目掛けて拳を振るう。しかし桜夜はそれを絶妙にギリギリのタイミングで回避してみせる。それからも殴るホムラ、かわす桜夜という構図が続いた。先に膠着を崩したのは桜夜だった。「ねーねー、ホムラちゃん」「うっせえなんだよ!」 攻撃をかわしながら、桜夜はニコニコ笑って言う。「乳首透けてるよ」「え? なっ」 ホムラの注意が一瞬自分の胸元に移る。その隙を逃さず、桜夜はホムラの頭を手刀でぽこりと叩いた。「はい、僕の勝ち」「はあ?! 今のは卑怯だろ!」「戦いに卑怯なんてありませーん」「うるっせえ! ふざけんな!」 ホムラが炎を放ちながら、桜夜を追いかけ回す。彼は彼で楽しげに逃げ出した。おいかけっこの始まりである。この過激なじゃれあい、もといトレーニングはホムラから言い出し、習慣化したものだった。もしホムラが桜夜に一発いれることができれば、遊びに連れていってもらえるという約束付きで。 そう、これはホムラなりのアプローチだったのだが、桜夜は知ってか知らず

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   第1話 コスモスの神託

     その夜、桜夜は夢を見た。夢の中で彼は宇宙にいた。《神殺しの騎士よ。もう1人の神殺しが現れた。秩序の名の下に排除せよ》(……あなたは?)《我が名はコスモス。秩序を守りし者》◆◆◆ 桜夜はそこで目を覚ました。まだ夜明け前だった。ぐっすりと眠る少女たちを起こさないようにしながらスーツに着替えると、公式任務中のバッジを付けた。そして静かに屋敷を出ると、庭にある桜の木が見えた。(……そういえば、あの日もこうして桜を……) ノスタルジックに浸りそうな頭を振ると、桜夜は目的に向かって歩を進めた。彼が向かったのはこの本邸の敷地内でももっとも大きい、玄武邸の宗主の私室だった。公式任務中のバッジがあれば、どこにでも出入りできる。それが相談役の特権だった。私室のふすまが使用人によって開けられるとその部屋の主と目があった。部屋の主たる小柄な老人は優しく笑った。「どうした? こんなに朝早く、なにか任務を与えたかの?」「いえ……」 使用人が立ち去るのを待ってから、老人の前に文机を挟んで座った。そして桜夜は夢の内容を話した。「ふむ……コスモス、秩序、か」「はい」「ふぅむ」 老人は少しだけ考えてから答えた。「しかし、神殺しが1人増えたとて、それがなんの脅威になる? ワシにはそれがわからん」「はあ……」「根本的に人間は神には勝てん。お前のその刃とて神に届くのは稀じゃろて」「それは、そうですが……」 神殺しとは伊達や酔狂ではなく、本当に神と戦うために作られた武器を刺す。それは一見すると強力な武器だが、実はそうでもない。本質的に神と人間は格が違う。神に近づき切ることなどまずできない。それが桜夜のもつ神殺しの刀――桜吹雪――の限界だった。「お主はなんでも気にし過ぎじゃ。今は余計なことを考えず休みなさい。そうそう、嫁取りについてもちゃんと考えるのじゃぞ。お主の血とあの魔女の血が混ざったらどんな子どもになるのか今から楽しみなのじゃからな」 にっと笑った老人の言葉は、少しだけ桜夜の心を軽くしてくれた。◆◆◆ 自分の屋敷に戻った桜夜だったが、もう一度眠る気にもなれず、縁側に腰かけて桜を眺めていた。しばらくそうしてぼんやりしているとパジャマ姿のサイカが姿を見せた。「ここにいたんだ。姿が見えないから心配しちゃった」 息を切らすサイカに桜夜は困ったように笑った。「

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   第2章 黒の騎士の死 プロローグ 新たなる日常

    「さあみんな! 朝御飯だよ!」 四方院本邸の敷地内にある桜夜の私邸に、少女サイカの声が響き渡る。本来この私邸はすぐに任務につけるようにと用意されたものだった。しかし今や桜夜の私邸というよりは、彼の押し掛け妻たちの家と化してしまった。不死身の魔女の討伐に実質成功した段階で彼女たちは自由の身となった。どこでもすきなところにいけるようになり、当初の契約も破棄されるはずだった。 しかし彼女たちには行く宛がなかった。もちろん桜夜を頼れば、寮のある四方院学園に入れるくらいはしてくれたかもしれない。とはいえそんな知識のない3人が思い立ったのは、このまま桜夜のお嫁さんになろうというものだった。そうしてハウスキーパーがやるはずの家事を3人で分担し、甲斐甲斐しく桜夜の世話を焼いた。 桜夜もなれない環境に最初は戸惑ったが、もうなれてしまった。だが、だからこそ思う。このまま彼女たちを自分の懐に入れてよいものかと。どこかで突き放すべきではないのかと。食卓につきながら、数日前に兄と慕う四方院家次期宗主候補の1人である若き天才、四方院 一(しほういんはじめ)との会話を思い出す。◆◆◆「いったいなにを悩んでいるんだい?」「それは……」 紅茶の入ったカップを桜夜の前に置きながら、一は微笑む。「あんなにかわいい子たちなんだ。受け入れてあげればいいじゃないか。それともタイプじゃないのかい?」「兄さんでもそんな下世話なことを言うんですね」「そりゃあ私だって人間だからね。そして君も人間だ」「僕は……」「大丈夫。君は人間だよ。確かに、おばあさまは君の瞳の中には化け物がいるといった。確かに、君は鳳凰と契約して病弱な身体を捨てた。だけどやっぱり人間だ。血も涙もながれ、そして失うことを恐れるちっぽけな人間だ」「兄さん……」 一は笑う。「だからね、桜夜。あの子たちが大切だと思うなら、失いたくないと思うなら、中途半端はやめて自分の心と向き合いなさいな」◆◆◆(自分の心、ねえ) スープを飲みながら難しい顔をしていたのだろう。サイカが不安そうに尋ねてきた。「あのお口に合いませんか? やはり和食の方が……」「ああ、いやいや、おいしいよ。ただ……」「ただ?」「いや、なぜ君たちがここまでするのかなって。君たちを助けるという契約は終わっただろう?」 サイカは少し怯んだが、ホムラとリオ

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   エピローグ わたしたちを……

     魔女の身体は永い眠りについた。本来ならば二度と蘇らないように燃やすべきだったが、少女たちの嘆願により、その身体は故郷に安置されることになった。この決定に、四方院四当主家の1つ白虎家の当主は門反対したが、宗主である四方院玄武の「死者を辱めてはならぬ」という鶴の一声で決まったのだった。 こうして桜夜は少女、サイカとの契約を果たし、少女たちを魔女の支配から解放した。そんな少女たちはというと……。 横浜にある桜夜の屋敷に居座っていた「キミたち、なんでここにいるの?」 母親の身体の安置のために一度は桜夜のそばを離れた少女たち。桜夜は自由に生きてくれと見送った。はずなのに彼女たちは再び来日し、桜夜を訪ねてきたのだ。「えへへ、それはね?」「わたくしたち、桜夜様にお伝えしたいことがあって」「いいか? 一回しか言わないからちゃんと聞いとけよ?」「わたしを」「わたくしを」「オレを」「お嫁さんにしてください!」「は?」 桜夜が面を食らっていると、少女たちが抱き着いてくる。その甘くてやわらかい身体は気持ちよく、桜夜は苦笑する。(結婚か……)『いつかぼくとけっこんしてくれる?』『あんたが立派なナイトになったらね、わんこ』 桜夜がさみしそうに笑ったのを、少女たちは気づかなかった。to be continued

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   第8話 三原色の祈り

     フェニキアと、桜夜と鳳凰の戦いは熾烈を極めた。フェニキアに桜吹雪を突き立てられればそれで決着なのだが、接近戦に持ち込むのが一苦労なのだ。 苦戦する桜夜と、傍観する母を見ながら、少女たちは祈るように両ひざをつく。「お母さん……」「死にたいなんて言うなよ……」「……母様はフェニキアの魔力に負け始めているのです。ですから……」 フェニキアを倒せば、母は死ぬかもしれない。しかしここで彼女たちが見ているだけでは、桜夜は死に、母も悪行を繰り返すだろう。ならば、そう少女たちは決めた。まだ母が優しかった頃に教えてくれたあの「魔法」を使おうと。3人の少女は膝をついたまま、両手を組み、祈りを捧げる。するとサイカから黄色い光が、ホムラからは赤い光が、リオからは青い光が溢れだし、フェニキアを包んだ。フェニキアは包み込む光に苦痛なのか暴れだす。しかし光が混じりあって白に変わる頃にはその動きを止めた。「三原色の祈り……」魔女が呟く。そして桜夜はフェニキアにできた隙を見逃さず、鳳凰の背中から飛び、フェニキアを頭から下半身まで一刀両断した。 声にならない断末魔をあげ、消滅するフェニキア。桜夜はすたりと着地すると、桜吹雪を鞘に納める。そして鳳凰は燃え尽きるように姿を消した。 そんな桜夜の視線の先では魔女が安らかに眠り、少女たちが泣いていた。to be continued

  • 黒の騎士と三原色の少女たち   第7話 魔女とのお茶会

     3日後の夜、不死身の魔女からの手紙はゲートを開いてくれた。恐らくこのゲートをくぐれば魔女と会えるのだろう。 不死身の魔女からのメッセージを受け取った桜夜は、すぐに宗主に報告した。宗主は大変面白がり、魔女との対話路線でいき、桜夜を使者という立場とした。 もちろん、少女たちは自分の母親の危険性をよく知っているので止めた。しかし桜夜は停戦交渉に行くと聞かなかった。 それを受けて少女たちも、母との決別のため同行すると言い出した。しかし桜夜としては母親側に寝返られては不利になると、一人でいくつもりだったが……。「桜夜さん、置いていかないでください」「そうだぞ!」「大丈夫。母からはわたくしたちがお守りします」 ゲートに飛び込む前に少女たちに見つかり、仕方なく4人で魔のお茶会にいくことにした。◆◆◆ ゲートの先は魔女の座る玉座の間だった。魔女は妖艶な笑みを浮かべて桜夜たちを迎えた。 本当にもてなすつもりがあったのか、血のように赤いワインとグラスが用意されていた。「いらっしゃい。ずいぶん娘(奴隷)たちと仲が良いようね」「お初にお目にかかります。お母様?」 桜夜は魔女ににこやかに言葉を返し、右手を自身の胸に当てながら頭を下げる。「ふふ、確かに面白い男ね。あんな出来損ないたちでよければくれてやるわ」「ありがとうございます。それではこのまま、ご息女たちと四方院家に手出ししないことをお約束いただけますか」「ええ、もう四方院家の秘密も娘も必要ない。そうあなたがいれば」 桜夜がぞくりと震えた瞬間、魔女が黒いイカズチを放ってきた。そのイカズチを鞘に入った桜吹雪で受け止めたものの、サイカの放つイカズチとはくらべものにならない威力だった。「……やめてお母さん!」 サイカが叫ぶも、魔女は桜夜から目を離さない。「あなたはフェニキアの分霊を倒した。それが出来るのは、不死者を殺せる者だけ」 魔女の言葉に桜夜は確信する。この魔女の願いは……。「さあ、私を殺しなさい。さもないと死ぬわよ」 黒の大洪水が桜夜を襲い、その水の中に彼を閉じ込める。 (くっ……息が……)「やめろクソババア!」 ホムラが叫び、ファイアボールを母親に投げつける。しかし魔女は除けもしない。その絶大な魔力と不死鳥フェニキアとの契約が自分を守ると確信しているからだ。「……なにを遊んでいるの

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status